中小企業が活用できる税制優遇は?
中小企業経営強化税制を徹底解説
掲載日 : 2023年1月19日
こんにちは。TOSEIライターチームです。
中小企業が活用できる税制優遇のひとつとして、「中小企業経営強化税制」があります。この制度を活用すれば、設備投資を行う場合に税制上の優遇を受けられる可能性があります。
しかし、制度内容が難しくて理解できないという方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、中小企業経営強化税制の適用条件や申請方法を解説します。
これから設備投資を検討している方、中小企業経営強化税制について詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
この記事でわかること
・中小企業が活用できる税制優遇として、中小企業経営強化税制がある
・中小企業経営強化税制とは、国から認定を受けた中小企業が、設備投資を行う場合に税制優遇を受けられる制度
・中小企業経営強化税制を利用すれば、設備投資を行うことで即時償却、あるいは税額控除を受けられる可能性がある
中小企業経営強化税制の概要
中小企業の経営力向上のため、政府は「中小企業等経営強化法」に基づいた支援を行っています。
その支援のひとつとして設けられている税制措置が「中小企業経営強化税制」です。
中小企業経営強化税制とは
「中小企業経営強化税制」とは、国から認定を受けた中小企業が、設備投資を行う場合に税制優遇を受けられる制度です。
設備投資を促進することによる中小企業の企業力強化、生産性の向上を後押しする目的で、中小企業庁によって設けられました。設備投資を行いながら節税のメリットを受けられるため、資金の限られた中小企業にとって非常に魅力的な制度といえるでしょう。
中小企業経営強化税制の適用期間
中小企業経営強化税制の適用期間は、2023年3月31日までとされています。当初は2021年3月末までの予定でしたが2年間期限が延長されました。経済産業省は2023年度以降も、さらなる延長要望を発表しています。
制度を利用するには、設備を購入する前に「経営力向上計画」の認定を受けなければなりません。
また対象設備を購入するだけでは制度が適用されないため、適用期間内に設備の使用を開始する必要があります。
中小企業経営強化税制の税制優遇
中小企業経営強化税制では、以下の税制優遇からどちらかを選んで適用できます。
・即時償却
・税額控除
それぞれメリットが異なるので、自社の経営計画に合った税制優遇を選択してください。
即時償却
即時償却を選ぶと、設備投資の費用を事業初年度に全額経費として計上できます。
設備投資にかかる費用は耐用年数に応じて減価償却するため、一般的には複数の年度に分けて経費計上します。
即時償却では全額まとめて経費計上できるので、初年度の法人税に対して高い節税効果が期待できるでしょう。
手元により多くの資金が残るため、キャッシュフローを改善できます。今後さらなる設備投資を考えている方や、資金繰りに不安のある方におすすめです。
ただし、あくまで前倒しで処理しているだけなので、支払う税額そのものは変わりません。
税額控除
税額控除を選んだ場合は、法人税から設備取得価格の10%(資本金3000万円超1億円以下の法人は7%)が控除されます。
ただし、法人税額または所得税額の20%が控除額の上限で、限度額を超える金額は繰り越し可能です。
減価償却による節税効果に加えて税額控除が適用されるため、支払う税額そのものを減額できます。今後も安定した利益を見込める場合は、税額控除を選択したほうが有利といえるでしょう。
赤字決算だとそもそも法人税が発生せず、節税効果を得られない可能性があるため注意してください。
中小企業経営強化税制が適用される条件
中小企業経営強化税制の適用を受けるためには、3つの条件を満たす必要があります。
1.経営力向上計画の認定を受けること
2.中小企業者であること
3.対象の事業内容であること
それぞれ詳しく解説します。
1. 経営力向上計画の認定を受けること
優遇税制を受けるには「経営力向上計画」を策定し、経済産業省の認定を受ける必要があります。「経営力向上計画」には設備投資や人材育成、財務管理など、経営力を向上するための取り組みを記載します。
原則として、設備を取得する前に認定が必要です。認定まで約1か月かかるため、余裕を持って申請しましょう。 詳しい申請方法は
中小企業庁の資料を参照してください。
2. 中小企業者であること
中小企業経営強化税制の対象は、青色申告書を提出する「中小企業者等」と定められています。
具体的に以下のような事業者です。
・資本金の額または出資金の額が1億円以下の法人
・資本または出資を有しない法人のうち常時使用する従業員数が1,000人以下の法人
・常時使用する従業員数が1,000人以下の個人
・協同組合など
ただし、大規模法人から出資を受けている場合などは、資本金が1億円以下であっても中小企業者から除外されます。
3. 対象の事業内容であること
中小企業経営強化税制では、対象となる事業内容が指定されています。取得した設備は指定事業のために使用しなければなりません。
製造業や建設業、小売業や一部の飲食店など多くの業種が該当しますが、電気水道や航空鉄道、銀行など該当しない事業もあります。
指定事業は以下の通りです。
指定事業 |
---|
製造業、建設業、農業、林業、漁業、水産養殖業、鉱業、採石業、砂利採取業、卸売業、道路貨物運送業、倉庫業、港湾運送業、ガス業、小売業、料理店業その他の飲食店業(料亭、バー、キャバレー、ナイトクラブ、その他これらに類する事業を除く)、一般旅客自動車運送業、海洋運輸業及び沿海運輸業、内航船舶貸渡業、旅行業、こん包業、郵便業、損害保険代理業、不動産業、情報通信業、駐車場業、物品賃貸業、学術研究、専門・技術サービス業、宿泊業、洗濯・理容・美容・浴場業、その他の生活関連サービス業、教育、学習支援業、医療、福祉業、協同組合(他に分類されないもの)、サービス業(他に分類されないもの) |
詳しくは中小企業庁の資料を確認してください。
中小企業経営強化税制の対象設備
対象設備は目的に応じて4つに分類されます。
類型 | 要件 | 確認者 | 対象設備 |
---|---|---|---|
A類型 | 生産性が旧モデル比平均 1%以上向上する設備 |
工業会など | ・機械装置(160万以上) ・工具(30万円以上) ・器具備品(30万円以上) ・建物付属設備(60万円以上) ・ソフトウェア(70万円以上) |
B類型 | 投資利益率が年平均5%以上の投資計画にかかる設備 | 経済産業局 | |
C類型 | 可視化、遠隔操作、自動制御化のいずれかに該当する設備 | ||
D類型 | 修正ROAまたは有形固定資産回転率が一定割合以上の投資計画にかかる設備 |
さらに、その他要件として以下が定められています。
・生産等設備を構成するもの
・国内への投資であること
・中古資産、貸付資産でないこと
企業の生産活動や販売活動、役務提供活動などのために使用される設備が対象です。たとえば事務用品や福利厚生施設にかかるものは対象に含まれません。
働き方改革の推進を目的とした、職場環境や業務効率性を改善するための設備については対象となる可能性があります。
ここからは4つの類型について、要件や申請方法を詳しく解説します。
手続きについて、A・C類型は購入する設備のメーカーに証明書を発行してもらいます。
B・D類型の場合は、まず公認会計士や税理士などの専門家に相談するとよいでしょう。
A類型(生産性向上設備)
生産性向上を目的とし、工業会から証明書を取得できる設備がA類型の対象です。
対象設備は特定のモデルに限られますが、経済産業局に投資計画を提出する必要がないため、ほかの3種類と比較して申請が容易といえるでしょう。
<要件>
以下の2つの要件を満たすこと。
1. 一定期間内に販売されたモデル(最新モデルである必要なし)
2. 経営力の向上に資するものの指標(生産効率、エネルギー効率、精度など)が旧モデルと比較して年平均1%以上向上している設備
<対象設備>
設備の種類 | 用途または細目 | 最低価額 | 販売開始時期 |
---|---|---|---|
機械装置 | すべて | 160万円以上 | 10年以内 |
工具 | 測定工具および検査工具 | 30万円以上 | 5年以内 |
器具備品 | すべて | 30万円以上 | 6年以内 |
建物附属設備 | すべて | 60万円以上 | 14年以内 |
ソフトウェア | 設備の稼働状況等にかかる情報収集機能および分析・指示機能を有するもの | 70万円以上 | 5年以内 |
<申請の流れ>
1. 設備メーカーを通して、工業会等から「証明書」を取得する
2. 担当省庁の主務大臣に対して、経営力向上計画の認定申請を行う
3. 認定を受けたら設備を取得して、事業に使用する
4. 税務申告を行う
B類型(収益力強化設備)
B類型は投資利益率の高い設備が対象となり、投資計画を策定する必要があります。
申請はやや煩雑になりますが、新店や工場の新ラインを設置する場合など、まとまった設備投資をする場合に有効です。対象範囲が広いため、A類型では対象とならなかったモデルの機械装置も対象になる可能性があります。
<要件>
年平均の投資利益率が5%以上となることが見込まれることにつき、経済産業大臣の確認を受けた投資計画に記載された設備。
投資の目的を達成するために必要不可欠であること。
<対象設備>
設備の種類 | 用途または細目 | 最低価額 |
---|---|---|
機械装置 | すべて | 160万円以上 |
工具 | すべて | 30万円以上 |
器具備品 | すべて | 30万円以上 |
建物附属設備 | すべて | 60万円以上 |
ソフトウェア | すべて | 70万円以上 |
<申請の流れ>
1.投資計画を策定し、公認会計士または税理士から「事前確認書」を取得する
2.経済産業局に「投資計画」「事前確認書」を提出し、確認書を取得する
3.担当省庁の主務大臣に対して、経営力向上計画の認定申請を行う
4.認定を受けたら設備を取得して、事業に使用する
5.税務申告を行う
6.計画認定後、投資計画に関する実施状況報告を提出
C類型(デジタル化設備)
デジタル化を通じた非対面・非接触ビジネス推進のための設備が対象です。
テレワークの推進など、事業のデジタル化を検討している方はぜひ活用してみてください。
<要件>
事業プロセスの
・遠隔操作
・可視化
・自動制御化
のいずれかを可能にする設備として、経済産業大臣局の確認を受けた投資計画に記載された設備。投資の目的を達成するために必要不可欠なものであること。
<対象設備>
設備の種類 | 用途または細目 | 最低価額 |
---|---|---|
機械装置 | すべて | 160万円以上 |
工具 | すべて | 30万円以上 |
器具備品 | すべて | 30万円以上 |
建物附属設備 | すべて | 60万円以上 |
ソフトウェア | すべて | 70万円以上 |
<申請の流れ>
1.投資計画を策定し、認定経営革新等支援機関から「事前確認書」を取得する
2.経済産業局へ「投資計画」「事前確認書」を提出し、確認書を取得する
3.担当省庁の主務大臣に対して、経営力向上計画の認定申請を行う
4.認定を受けたら設備を取得して、事業に使用する
5.税務申告を行う
D型(経営資源集約化設備)
2021年の税制改正によって、M&A後の積極的な投資を促す目的で新設されました。
<要件>
計画終了年次の修正ROAまたは有形固定資産回転率が以下表の要件を満たすことが見込まれるものであることにつき、経済産業大臣の確認を受けた投資計画に記載された投資の目的を達成するために必要不可欠な設備
計画期間 | 有形固定資産回転率 | 修正ROA |
---|---|---|
3年 | +2% | +0.3ポイント |
4年 | +2.5% | +0.4ポイント |
5年 | +3% | +0.5ポイント |
<対象設備>
設備の種類 | 用途または細目 | 最低価額 |
---|---|---|
機械装置 | すべて | 160万円以上 |
工具 | すべて | 30万円以上 |
器具備品 | すべて | 30万円以上 |
建物附属設備 | すべて | 60万円以上 |
ソフトウェア | すべて | 70万円以上 |
<申請の流れ>
B類型と同じですが、計画認定後に事業の承継報告および事業承継等に関する状況報告を提出します。
まとめ
今回は中小企業が活用できる税制優遇として、中小企業経営強化税制をご紹介しました。
この制度を利用すれば、設備投資を行うことで即時償却、あるいは税額控除を受けられる可能性があります。
たとえば要件を満たした中小企業が、コインランドリー事業を開業するために洗濯機を取得するケースは、基本的に中小企業経営強化税制の対象となります。
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※当記事の内容は、時勢に合わせた情報を元に編集しておりますが、時間の経過により情報が古くなる場合がございますのでご了承ください。
又、各記事詳細につきましては、各専門家へお問い合わせいただきますようお願いいたします。
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